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[第1号]

 

ホーム』にも書きましたが、私もみなさん同様、英会話がなかなか上達せずかなり手こずりました。学生時代は真面目に勉強すればきっと努力は報われると信じていたので、必死になって英単語や文法を覚えましたが、ほとんど効果はなく、しかし他の習得法も思いつかないので、継続は力なりと自分に言い聞かせて暗記を続けました。結果が全く出ないことに嫌気が差し勉強を放置するようになったある日、ホームステイ先の食卓で、ルームメイトが『No way!(訳:あり得ない)』とやたら言うのが耳に入ってきました。当時は『No way!』の意味は知らず、ただなんとなく『「no」と「way」だから否定的な意味?』と自分流に解釈。その後も彼は『No way!』を連発します。それを聞いているホストペアレンツの反応を観察しているうちに、私はだいたいの意味をわかった気がしました。そこで勇気を振り絞って私も『No way!』と一言。そうしたらみんなが私の方を一斉に見たのです。食事の時、私は決まって愛想笑いだけして発話することが殆どなかったので、みんなびっくりしていましたがどこか嬉しそうでした。でも疑い深い私は『通じたのはまぐれ』と思うだけでそれ以上は期待しませんでした。その後も食卓の会話が続き、『No way!』の次は『Yes way!(訳:あり得る)』まで出てきて、場の雰囲気から『「No way」の逆の意味なんだ」』と理解でき、その日は私にしては収穫の多い一日になりました。次の日、学校のクラスメートと会話をした時、いつもはほとんど話さない私が『No way!』と言ったら、友達の反応がよくしかも笑いをとることすらできました。私の英語が通じたのです。教書で覚えた単語ではなく、昨日食卓で覚えた自然な表現。その時『これだ!』と思いました。それからやみつきになり、耳から覚えた言葉を真似することを毎日続けていくと、数秒しか話せなかったのが、時間と共に数分間そして数時間も話せるようになりました。

 

それ以降、私は英語を勉強することをやめました。どうしても勉強したくなる時もありましたがその気持ちを抑えて、代わりにテレビや映画を見て、聞こえてくる英語の中で自分にも使えそうな単語やフレーズを口に出して練習し、それらを実践で使うようにしました。

 

二カ国語が話せる人、特に会話力を容易に身に付けることができた人にとっては、こんな私の体験談は特記すべきことではないし、『当たり前』と思われるかもしれません。でも、過去の私を含めた英会話の習得に手こずる多くの日本人は、『喋ることで身につける方法』を知らないのです。なぜなら学校でそういう教育を受けていないからです。日本でいい学校に入るためには、英会話力ではなく文法知識や長文読解力などが求められます。しかし、近年では職場で当たり前に英語が必要とされたり、『受験英語ではダメ』『使える英語が大事』などと、日本人の意識も少しづつ変わり始めてきました。

 

私も日本の英語教育を受けてきたので、このサイトを見てくださっているみなさんの英語に対するコンプレックスは少なからず分かります。だからこそ、一日も早く『勉強する英語』から『しゃべる英語』に切り替え、生徒さん1人1人に合った正しい英会話習得法を伝えたいと思っています。

 

英会話を習得する一番の方法はネーティウ゛スピーカーの友達をつくり日々英語を話すことです。しかし日本に住んでいる限りそれは容易ではありません。日本にいる外国人に英語で話しかけても、日本語で返事を返されることがよくあるからです。彼らは日本語を勉強するために来日しているのだから当然です。

 

『ネーティウ゛と話すのがまだ怖い』『ネーティウ゛は早口なので何を言っているのか分からない』などの理由で、日本人講師を希望する人も意外と多く、私の教室にもそういう方が来てくださいます。私の役割は、英語を教えることは当然ですが、それ以上にカウンセリングを通して生徒さんが何につまずいているのか、どうすれば英語に対する不安を勇気と自信に変えるお手伝いができるのか、どんな体験が生徒さんの英語の道を切り開くきっかけとなるのかを一緒に探すことだと思っています。

 

私は英会話は生涯学習だと思っています。だからと言って、一生英会話教室に通っていたら莫大なお金がかかってしまいます。もちろん金銭的に大変でなければ個人の自由なので反対はしません。私は生徒さん1人1人にとって正しく且つ楽しい英会話習得法を探し、『英会話は気負う必要はない』とリラックスしてもらい、一日も早く英会話教室を卒業し、仕事や旅行で自由に英語を使いこなせるようになって欲しいと思っています。料理の腕をあげるために、料理学校に一生通い続ける人はいません。ある程度経ったら、習ったことを忠実に家庭で再現し、慣れてきたらそれを基礎に自己流の味を出していきますよね。

 

英会話を楽しく長く続けるには、実践の場をたくさん設け(詳細は第2号掲載)、嬉しい経験や苦い経験を積むことです。嬉しい経験とは、使った英語を人から褒めてもらうことです。『You speak good English!(訳:英語うまいね)』と言われると誰でも嬉しいものです。言われるためには、自信がある単語やフレーズをタイミングよく会話に放り込むことです。また苦い経験をすることも英会話の習得には欠かせません。大人になればなるほど失敗を恐れますが、『外国語の習得過程だから失敗して当たり前だしそれが許される』と前向きに考えてください。私も人には言えない失敗談が山ほどあります。でも失敗すると二度と同じミスはしたくないという気持ちになるので、次から気を付けるようになります。気を付けられるようになると、次から正しい英語が言えるようになります。その点、子供は怖いもの知らずです。年齢が低ければ低いほど失敗を恐れないので、耳で覚えた英語を、意味や発音が曖昧でも自信を持って使います。『awesome(訳:すごい)』を耳にした子供は、この言葉が『おっさん』に聞こえるらしく、最初はふざけてあらゆる場面で『オッサン』と言います。私が『awesome』と発音を訂正すると、次第に『awesome』と言えるようになります。

 

大人にも子供に勝る強みがあります。多くの方が、『英語が苦手』『今から英語を始めても遅い』『覚えてもすぐ忘れる』などの悩みを抱えていらっしゃいますが、私は大人も子供も関係ないと思っています。大人は人生経験が豊富なので、物事を察する力が優れています。例えば、アメリカのドラマの法廷シーンを観ているとします。『陪審員団』『異議申し立て』『敗訴』などの専門用語がたくさん出てきますが、これらの英単語を知らなくても、場面から英語を学ぶことが可能です。『陪審員団』の顔が映ったシーンで『jury』と聞こえてくると、『「jury」ってこの人達のことかな』と推測し、また他の似たシーンで『jury』が出てきたら『やっぱりそうかも』と確信を持ち始め、3度同じことが起きたらほぼ確信していいと思います。社会の仕組みを知っているからこそできる技です。

 

嬉しい経験や苦い経験を積むことなく会議や旅行先で英語を流暢に話している自分を思い描く人がいます。ある意味、このような夢を抱きイメージトレーニングすることは大切かもしれませんが、やはり練習しないで本番で完璧な英語を話すのは無理です。本番用の曲を何回か聞いて、覚えた気分になってボイストレーニングもろくにせずに録音に臨むなんてことしませんよね。

 

スポーツ選手、プログラマー、デザイナー、科学者、どの分野の人も、日々練習や下積みをしているからいざという時にいい仕事ができます。また、どんなにベテランでも失敗します。なのに英会話となると、なぜか多くの人が大胆な考え方をするのです。練習もしないで、すぐにでも英語でプレゼンができるようになりたいと。残念ながら、練習なしでは流暢にはなれません。練習は地味で孤独です。でも決して裏切りません。普段から練習をしていればいつか必ず本番で言いたいことが言えるようになります!練習を怠れば、せっかく話すチャンスがあってもタイミングを逃し悔しい思いをすることになるでしょう。これではもったいないと思いませんか。だから練習しましょう!

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